湯川秀樹博士の伝記


私は,読書というのが嫌いだったのか,苦手だったのか,いずれにしてもあまり本を読む子供ではなかった。今でも本を読まない大学教員としてわが家では語り草になっている。語っているのは家内だが。とにかく大学の教員とは思えないほど家には本が無い,と感じるらしい。

さて,私の記憶が正しければ,湯川博士の伝記を読んだ経緯は次のとおりである。

私の実の兄は本が大好きで,よく読んでいたようだ。兄と比べて本を読まない私のことを,親が心配し,学校の図書室で本を借りてきて読めと,いう指令を出したのである。目標として,3日で1冊というペースで読むことを約束させられた(何か見返りがあったかどうかは覚えていない)。家で本を読む習慣さえつければ,読むようになるのではないか,という考えだったろう。確か,小学校3年生のときである。何日かして,湯川秀樹の伝記が目についた。いわゆる児童文学全集のうちの一冊で,さし絵などが入っており,大きな活字で,読みやすい本だったのを覚えている。そこには湯川博士の生い立ちから,研究内容・研究生活に至る内容が記述されており,漠然と,学者になってみたいという気持ちが沸いた記憶がある。面白かったのか,私としてはめずらしく,夜遅くまでかかって1日で最後まで読んでしまったのだ。

このころ,他にもベーブ・ルースなどの伝記も読んだ覚えがある。本を読むのはそれほど好きではなかったが,どちらかというと,伝記が好きだったのだ。


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