物質の構造には原子構造,分子構造,結晶構造,液体構造等が考えられる。結晶も液体も分子や原子の集合体となって初めて現れる状態であり,後者2つは前者の集合体として初めて認識される構造である。一方,遠赤外線付近を境として,比較的高エネルギー領域の性質は,原子および分子の性質そのものを反映したものであるのに対し,比較的低エネルギー領域で観測される物性は分子や原子の集合体としての性質を反映したものとなる。巨視的性質として現れる現象は多くが後者であり,やはり集合体としての性質に起因する。いずれにしても,原子・分子の挙動とそれらの集合体の性質とは,基本的に異なった現れ方をするので,物質科学の立場からは,両方の性質を同時に記述する必要がある。物理化学特論では,物質の構造と物性の関係について,ミクロおよびマクロな視点から同時に論じる。
授業内容
第1章 イントロダクション
- 物理化学とは何か。(化学の諸分野と物理化学の関係)
- 化学の3本柱と物理化学
- 物質の成り立ち
第2章 原子・分子の構造と性質第3章 原子・分子の集合体の構造と性質
- 物質の構造と原子構造
- 量子力学30分コース
Schroedinger方程式
波動関数とエネルギー固有値
1次元箱型ポテンシャル内の粒子の運動の量子力学的記述
種々のポテンシャル関数に対する結果- 原子構造
水素(様)原子の電子構造
多電子原子の電子構造- 分子構造
水素分子イオン
水素分子
メタン
水- 分子の分光学的性質
分子による光吸収
可視・紫外分光分析
振動分光学
核磁気共鳴
- 原子・分子の集合体としての物質の三態変化
集合体を取り扱うための論理体系 --熱力学と統計力学--
物質の状態変化と状態図
物質の三態とその特徴
水の状態変化と状態図- 気体の性質
理想気体と実在気体
物質の状態図と気液臨界点
対応状態の原理
Van der Waals方程式- 結晶の構造と性質
"固体"と結晶
結晶の磁気的,誘電的性質
結晶間相転移- 液体の構造と性質
液体の構造と性質
溶液の熱力学的性質
- 中間相の性質
柔粘性結晶
液晶